衣類の穴はこいつの仕業!カツオブシムシ
衣替えで久しぶりに取り出したお気に入りのウールのセーターに、ぽつりと小さな穴が開いている。そんな悲しい経験の犯人は、あなたのクローゼットに潜む、黒くて丸い小さな虫「ヒメマルカツオブシムシ」の仕業かもしれません。成虫は体長二ミリから三ミリ程度で、黒い体にまだら模様がある、丸くて硬い甲虫です。見た目はテントウムシにも似ていますが、動きは比較的ゆっくりしています。この成虫自体は、衣類を食べることはありません。彼らは春になると屋外の白い花(マーガレットやヒメジョオンなど)に集まり、花粉などを食べて生活しています。問題なのは、産卵のために家の中に侵入してくることです。窓から入ってきたり、洗濯物にくっついてきたりした成虫は、クローゼットやタンスの暗がりに潜り込み、衣類に卵を産み付けます。そして、その卵から孵化した「幼虫」こそが、衣類に穴を開ける真犯人なのです。幼虫は、まるで小さな毛虫のような姿をしており、暗い場所を好んで、ウールやカシミヤ、シルクといった動物性繊維に含まれる「ケラチン」というタンパク質を食べて成長します。彼らはゆっくりと、しかし確実に、数ヶ月から一年以上かけて衣類を食害し続けるのです。対策の基本は、成虫を家に入れないことと、幼虫が育つ環境を作らないことです。春先に窓を開ける際は網戸を必ず閉め、洗濯物を取り込む際は虫が付いていないかをよく確認しましょう。そして、衣類を長期間保管する前には、必ず洗濯やクリーニングで汚れを完全に落とす「しまい洗い」を徹底します。皮脂や食べこぼしのシミは、虫にとって最高の栄養源となります。最後に、収納スペースには必ず防虫剤を設置し、年に一度は交換することを忘れないでください。この黒くて丸い訪問者は、静かなる衣類の破壊者なのです。