地面の中に巣を作るという共通点から、クロスズメバチの巣と、最強の蜂であるオオスズメバチの巣は、しばしば混同されることがあります。どちらも極めて危険であることに変わりはありませんが、その生態や巣の構造には、いくつかの違いがあります。この違いを知っておくことは、遭遇した際の危険度を、より正確に判断する上で役立ちます。まず、最も分かりやすい違いは、「蜂の大きさ」です。クロスズメバチの働き蜂は、体長10〜15ミリメートル程度と、スズメバチの中では比較的小型です。黒地に白い縞模様が特徴で、全体的に黒っぽい印象を与えます。一方、オオスズメバチの働き蜂は、体長27〜38ミリメートルと、圧倒的な大きさを誇ります。頭部がオレンジ色で、胸部が黒、腹部が黄色と黒の縞模様という、非常に派手なカラーリングをしています。もし、巣に出入りしている蜂が、明らかに小型で黒っぽければ、クロスズメバチの可能性が高いです。次に、「巣の場所」の傾向にも違いがあります。クロスズメバチは、前述の通り、ネズミの古巣など、既存の空洞を再利用することが多いです。それに対して、オオスズメバチは、より積極的に、自ら土を掘り進んで、巣の空間を拡張していく能力を持っています。そのため、オオスズメバチの巣は、より大規模になる傾向があります。そして、「巣の構造」そのものにも、微妙な違いが見られます。どちらの巣も、木の皮などを材料にした、何層にも重なる巣盤(育房の集まり)で構成されていますが、巣盤を支える「支柱」の作り方が異なります。クロスズメバチの巣の支柱は、比較的細く、数が多いのが特徴です。一方、オオスズメバチの巣の支柱は、太くて頑丈で、数も少ないです。もちろん、これは巣を掘り起こしてみなければ分からないことですが、専門家はこうした点からも、巣の主を特定します。しかし、私たち素人にとっては、地面から蜂が多数出入りしている時点で、それは「最高レベルの警戒警報」であると認識することが何よりも重要です。その蜂がクロスズメバチであろうと、オオスズメバチであろうと、取るべき行動はただ一つ。「静かに、そして速やかに、その場を離れる」ことです。