テントウムシといえば、赤地に七つの黒い星を持つ「ナナホシテントウ」を思い浮かべ、アブラムシを食べてくれる「益虫」として、多くの人に親しまれています。しかし、テントウムシの世界は非常に多様で、中には黒くて丸い姿をしたものや、益虫どころか植物を食い荒らす「害虫」となるものも存在します。テントウムシだからといって、一括りに益虫と判断するのは早計かもしれません。まず、黒いテントウムシの代表格が、「ナミテントウ」の黒色型です。ナミテントウは、同じ種類でありながら、赤地に黒い斑点を持つもの、黒地に赤い斑点を持つものなど、非常に多くの色彩変異があることで知られています。その中でも、全体が光沢のある黒で、赤い斑点が二つ、あるいは四つあるタイプや、斑点が全くない真っ黒なタイプは、一見するとテントウムシとは思えないかもしれません。しかし、彼らもナナホシテントウと同様に、アブラムシを主食とする、非常に優れた益虫です。庭の植物などで見かけても、大切に見守ってあげましょう。一方で、同じように黒い体を持つテントウムシの中には、注意が必要な種類もいます。その代表が、「ニジュウヤホシテントウ」です。彼らの体は、光沢のない、くすんだ黄褐色から茶褐色で、名前の通り二十八個の黒い斑点がありますが、この斑点が繋がり、全体的に黒っぽく見える個体もいます。彼らは、アブラムシではなく、ナスやトマト、ジャガイモといったナス科の植物の葉を食べる、完全な「害虫」です。葉の表面を削るように食べるため、食べた跡が網目状の模様になるのが特徴です。益虫のテントウムシとの最も簡単な見分け方は、「体の光沢」です。アブラムシを食べる益虫のテントウムシの多くは、体表がツルツルとして光沢があります。一方、植物を食べる害虫のニジュウヤホシテントウの仲間は、体表に微細な毛が密生しているため、光沢がなく、ベルベットのような質感に見えます。このポイントを覚えておけば、庭に現れた黒いテントウムシが、味方なのか、それとも敵なのかを、正しく見分けることができるでしょう。