あれは、カラッと晴れた気持ちの良い秋の一日のことでした。夏の間に溜め込んだシーツやタオルケットをまとめて洗濯し、ベランダいっぱいに広げて干したのです。夕方、すっかり乾いた洗濯物を取り込もうとした私は、白いシーツの上に緑色の小さな点々がいくつか付いているのに気づきました。最初は、「どこかの木の葉でも付いたのかな」と、何の気なしに手で払おうとしました。その瞬間、ツンと鼻をつく、あの独特の青臭い、忘れもしない悪臭が立ち上ったのです。そうです、その緑色の点々の正体は、すべてカメムシでした。数えてみると、大小合わせて十匹以上。パニックになった私は、慌ててシーツを激しく揺さぶりました。それが、さらなる悲劇の引き金となりました。驚いたカメムシたちは、一斉に悪臭を放ちながら飛び立ち、その一部は開いていた窓から室内へと侵入してしまったのです。家中があの不快な匂いに包まれ、カーテンに張り付いたカメムシを追いかける、地獄のような時間が始まりました。ようやく室内のカメム-シを退治し終え、ベランダに戻ると、悪臭は洗濯物全体に染み付いてしまっていました。特に、カメムシが直接付着していたシーツは悲惨な状態で、シミまでできていました。結局、その日に洗った洗濯物は、すべて洗い直しとなりました。二度目の洗濯では、匂いが取れるか不安で、洗剤と柔軟剤を普段の倍以上投入しました。この苦い経験から、私が学んだ教訓は二つあります。一つは、洗濯物を取り込む際は、まず虫が付いていないかを遠目からしっかり確認すること。そして、もしカメムシが付いていたら、決して手で払ったり、洗濯物を揺さぶったりせず、ティッシュなどでそっとつまんで取り除くか、刺激しないようにデコピンのような形で弾き飛ばすのが最善だということです。そしてもう一つは、カメムシが多く発生する秋口には、できるだけ室内干しに切り替えるという自己防衛策です。あの日の悪夢を、私は一生忘れないでしょう。