一度、家の中で小さい蛾を大発生させてしまった経験は、二度と繰り返したくない悪夢です。その駆除に要した労力と精神的なストレスを考えれば、最も賢明な対策は、そもそも蛾を「発生させない」ための環境を、日々の暮らしの中に作り上げることです。ここでは、蛾が住みにくい家にするための、効果的な予防習慣を、キッチン編とクローゼット編に分けて紹介します。まず、「キッチン編(ノシメマダラメイガ対策)」です。第一の習慣は、「食品の管理方法を根本から見直す」ことです。小麦粉や米、乾麺、お菓子、ペットフードといった、蛾の餌となる可能性のある食品は、購入してきたらすぐに、元の袋から出して、必ず密閉性の高い容器(ガラス瓶や、パッキン付きのプラスチック容器など)に移し替えましょう。輪ゴムやクリップで留めただけの袋は、彼らにとって無防備も同然です。そして、最も効果的なのが、これらの食品を「冷蔵庫で保管する」ことです。蛾の卵や幼虫は、低温環境では発育・活動できないため、冷蔵庫の中は絶対的な安全地帯となります。第二の習慣は、「こまめな清掃」です。床にこぼれた食品カスや、棚の隅に溜まった粉などを放置しないよう、キッチンは常に清潔に保ちましょう。次に、「クローゼット編(イガ・コイガ対策)」です。こちらの第一の習慣は、「衣類の汚れを完全に落としてからしまう」ことです。一度でも袖を通した衣類は、必ず洗濯またはクリーニングをして、汗や皮脂といった、虫の餌となる汚れをリセットしてから収納しましょう。これが「しまい洗い」の鉄則です。第二の習慣は、「クローゼットの環境管理」です。衣類をぎゅうぎゅうに詰め込まず、風通しの良い状態を保ちます。天気の良い日には、定期的にクローゼットの扉を開けて換気し、内部の湿気を追い出しましょう。除湿剤を置くのも非常に有効です。そして、第三の習慣が「防虫剤の正しい使用」です。防虫剤は、有効期限が切れる前に、必ず新しいものと交換してください。期限切れの防虫剤は、ただのプラスチックの飾りです。これらの地道な予防習慣は、一見すると面倒に感じるかもしれません。しかし、一度、蛾の巣窟と化したキッチンやクローゼットを片付ける大変さを思えば、日々の少しの手間こそが、最も楽で、確実な防御策であることに気づくはずです。