スズメバチの駆除というと、多くの人が強力な殺虫剤を思い浮かべるでしょう。しかし、状況によっては、薬剤を使わずに、あるいは薬剤と組み合わせて、彼らを退治するための、いくつかの古典的で、しかし効果的な方法が存在します。ただし、これらの方法は、巣の駆除には適用できず、あくまで単独で飛んでいるハチや、家に侵入してきた個体に対して限定的に使用されるものであり、相応のリスクを伴うことを理解しておく必要があります。まず、古くから知られているのが「燻煙(くんえん)」、つまり煙でいぶす方法です。ハチは、煙を非常に嫌う習性があります。これは、煙が、彼らの生命を脅かす「火事」を連想させるため、本能的にその場から避難しようとするからです。家の軒下などにハチが頻繁に飛来して、巣作りを始めようとしている初期段階であれば、その場所で蚊取り線香を焚いたり、バーベキューの煙を当てたりすることで、その場所を「危険な場所」と認識させ、追い払う効果が期待できます。ただし、すでに巣が大きくなっている場合は、ハチを興奮させるだけで逆効果になるため、絶対に行ってはいけません。次に、家に侵入してきた一匹のスズメバチに対して有効なのが、「掃除機で吸い込む」という、少し荒療治な方法です。掃除機の吸引力は非常に強力で、飛んでいるスズメバチも、一度ノズルの範囲に入れば、抵抗する間もなく吸い込まれてしまいます。吸い込んだ後は、すぐにノズルに蓋をするか、ガムテープで塞ぎ、掃除機のスイッチを入れたまま数分間放置して、内部で確実に死滅させます。その後、紙パックごとビニール袋に入れて処分します。これは、殺虫剤を室内に撒きたくない場合に有効ですが、失敗した時のリスクは非常に高いです。そして、最も原始的で、しかし確実なのが「物理的に叩き潰す」方法です。ただし、新聞紙やハエたたきのような、中途半端な武器では、反撃にあうのが関の山です。靴や、厚い本など、一撃で確実に仕留められるだけの質量と硬さを持つもので、躊躇なく、全力で叩きつける必要があります。これらの方法は、いずれもスズメバチとの至近距離での戦闘を意味します。十分な防護と、失敗した時の覚悟がない限り、安易に試すべきではありません。やはり、最も安全で確実なのは、十分な距離を保って攻撃できる、スズメ-バチ専用の殺虫剤を使用することなのです。
殺虫剤以外でスズメバチを退治する方法