家の中や庭先で豆粒のような小さな体に針金のように細長い脚がついた奇妙な生き物が歩いているのを見かけてこれは蜘蛛なのかそれとも別の何かなのかと疑問に思ったことはありませんか。その正体はザトムシと呼ばれる生き物で英語ではあしながおじさんを意味するダディロングレッグスという愛称で呼ばれていますが彼らは蜘蛛と同じクモ形類に属してはいるものの蜘蛛とは全く異なるグループに分類される生物です。蜘蛛との最大の違いはその体の構造にあり蜘蛛の体は頭胸部と腹部の二つにはっきりと分かれていますがザトムシの体は全体が一つの楕円形の塊になっておりくびれがありません。また蜘蛛のように糸を出すこともなければ毒腺も持っていないため巣を張ることも人を噛むこともなく完全に無害な平和主義者です。ザトムシの最大の特徴であるあの異常なまでに長い脚は単なる移動手段ではなく非常に優れた感覚器官としての役割を果たしており第二脚と呼ばれる二番目の脚が特に長くこれを触角のように動かしながら周囲の障害物や餌や水源を探知しています。彼らは雑食性であり小さな昆虫の死骸やミミズキノコ落ちた果実などを食べて分解者として自然界のサイクルに貢献していますが家の中に侵入してくることは稀であり基本的には湿った森林や草むらを好むためもし家の中で見かけたとしてもそれは迷い込んでしまっただけでありそこで繁殖することはまずありません。ザトムシは非常に脆弱な生き物であり天敵に脚を掴まれるとトカゲの尻尾のように自ら脚を切り離して逃げる自切という行動をとりますが切れた脚は二度と再生しないため脚を失うことは彼らにとって死活問題となります。見た目が独特で不気味に思われることもありますが彼らは人間に対して何の害も及ぼさず家を汚すこともなくただひっそりと歩いているだけの存在ですので見かけたら怖がらずに優しく紙などに乗せて外の土のある場所へ帰してあげてください。ザトムシは三億年以上前の化石からも現在とほぼ同じ姿で見つかっておりその長い脚と原始的な体の構造で長い地球の歴史を生き抜いてきた生きた化石とも言える存在でありその小さな体には進化の不思議が詰まっているのです。