新しい生活への期待に胸を膨らませて引っ越した、築二十年のリノベーション物件。内装は新築のように綺麗でしたが、入居して三日目の夜、私はその部屋に潜んでいた「先住民」の存在に気づかされました。キッチンの引き出しを開けた瞬間、一センチほどの小さな茶色の影が、スッと奥へ消えていったのです。その時の心臓が止まるような恐怖と嫌悪感は、今思い出しても背筋が凍ります。私は即座に、最強の呼び声高いブラックキャップを六個セットで購入し、キッチンの至る所に配置しました。その際、頭をよぎったのは「これを置いたら、床下や隣の家からもっとたくさんの仲間を呼び寄せてしまうのではないか」という不安でした。しかし、背に腹は代えられません。私は「呼び寄せてもいい、全部仕留めてやる」という覚悟で、冷蔵庫の下やガスコンロの裏に黒いキャップを忍ばせました。設置した直後、驚くべき光景を目にしました。それまで一度も見かけなかった場所、例えばリビングの隅や洗面所の扉付近で、フラフラと元気がなさそうに歩くゴキブリを数回見かけたのです。これこそが、ブラックキャップが「呼び寄せる」という噂の正体でした。彼らは外から来たのではなく、壁の裏側や幅木の隙間に隠れていたところを、ブラックキャップの強力な誘引剤の匂いによってあぶり出されたのです。匂いに抗えず、危険を顧みずに餌場へ這い出してきた彼らの姿を見て、私はこの製品の恐ろしいほどの威力を確信しました。もし、ブラックキャップを置いていなければ、彼らは暗闇の中でひっそりと繁殖を続け、数ヶ月後には私のキッチンを完全に占拠していたことでしょう。ブラックキャップが「呼び寄せた」のは災厄ではなく、見えない場所に潜んでいたリスクそのものだったのです。設置から一週間が経つ頃、廊下で仰向けになって力尽きている一匹を発見したのを最後に、家の中から不穏な気配は完全に消え去りました。あれから一年、私は定期的に中身を更新していますが、一度もゴキブリの姿を見ていません。あの入居当初の遭遇戦は、ブラックキャップが家の中の汚染を一掃するために必要なプロセスだったのだと、今では理解しています。呼び寄せるという言葉に怯えて対策を遅らせることは、結果として敵に猶予を与えるだけです。キッチンという戦場において、ブラックキャップは私の信頼できる最強の戦友となりました。あの日、勇気を持って黒いケースを置いた自分を、私は心から褒めてやりたいと思っています。