夏の虫と言えばまず蚊を思い浮かべる人が多いですが、アウトドアの上級者が最も恐れるのは、実は蚊ではなくブユです。ブユの怖さは、その「隠密性」と「執拗さ」、そして「深刻な事後被害」の三点に集約されます。まず隠密性についてですが、蚊が耳元で不快な羽音を立てて接近を知らせてくれるのに対し、ブユはほぼ無音で近づき、着陸した感触もほとんどありません。気づいたときにはすでに皮膚が切り裂かれ、吸血が終わっているというのがブユの恐ろしい点です。次に執拗さです。蚊は一度払いのければ諦めることが多いですが、ブユは標的を定めると何度でも戻ってきて、衣服の隙間や靴下のわずかな重なり目を探り当て、執拗に攻撃を繰り返します。特に地面に近い足を狙う習性が強く、気づかないうちに両足首が血まみれになっているという事態が頻繁に起こります。そして最も恐ろしいのが、噛まれた後の苦痛です。蚊の痒みはせいぜい数時間から一日で収まりますが、ブユの場合は、刺咬後数時間経ってから火がついたような熱感とともに腫れ始め、その痒みは一週間以上、時には数ヶ月にわたってぶり返します。掻けば掻くほど患部は硬く結節し、そこから浸出液が出てくるという、まさに「怪我」に近い状態になります。ブユは綺麗な水がある場所にしかいないため、「こんなに清々しい場所なら虫もいないだろう」という油断を突いてきます。安全な夏を過ごすためには、まずこの「蚊とは全く別の生き物である」という認識を強く持つことが重要です。川の近くでバーベキューをするなら、足元にはサンダルではなくスニーカーを履き、可能であれば防虫機能付きのタイツを着用してください。また、ブユが嫌うとされる木酢液の香りをテント周辺に漂わせるのも有効な手段です。自然は人間に優しいだけでなく、こうした厳しい側面も持ち合わせています。ブユの怖さを正しく理解することは、決して自然を遠ざけることではなく、より深く、より安全に自然と付き合っていくためのマナーのようなものです。一匹のブユに夏全体の思い出を苦いものにされないよう、万全の知識と準備を持ってフィールドへ繰り出しましょう。
蚊とは違うブユの怖さを知って安全な夏を過ごす方法