夏の終わりから秋にかけて、洗濯物を取り込もうとしたら、白いシャツに黒くて丸い、テントウムシのような虫が付いていた。何の気なしに手で払いのけようとした瞬間、ツンと鼻をつく、あの独特の悪臭が。その虫の正体は、テントウム-シではなく、「マルカメムシ」というカメムシの仲間かもしれません。カメムシというと、緑色や茶色の、盾のような五角形をした姿を思い浮かべる人が多いですが、中にはこのように、黒くて丸い体型をした種類も存在するのです。マルカメムシは、体長五ミリ程度の、光沢のある黒褐色をした丸い虫です。彼らの主な住処は、屋外のマメ科の植物、特にクズの葉が生い茂る場所です。そこで植物の汁を吸って生活していますが、秋になり気温が下がってくると、越冬するための暖かい場所を求めて、一斉に移動を始めます。その際に、日当たりの良い、白くて暖かい建物の壁や、干された洗濯物に、集団で飛来することがあるのです。彼らは、洗濯物の暖かさを快適な越冬場所と勘違いして付着します。そして、それに気づかずに洗濯物を取り込んでしまうことで、家の中に侵入を許してしまうのです。マルカメムシ自体に毒はなく、人を刺したり咬んだりすることはありません。しかし、彼らが「不快害虫」として嫌われる最大の理由は、その強烈な悪臭にあります。危険を察知すると、胸部にある臭腺から、青臭い匂いのする液体を分泌します。この匂いは非常に強力で、一度衣類に付着すると、洗濯し直してもなかなか取れないほどです。対策としては、まず、洗濯物を取り込む際に、虫が付いていないかをよく確認する習慣をつけることが重要です。もしマルカメムシを発見した場合は、決して手で潰したり、刺激したりしてはいけません。ティッシュペーパーなどでそっとつまんで取り除くか、ガムテープなどの粘着テープに貼り付けて捕獲するのが、最も安全で匂いを出させない方法です。秋の陽気に誘われてやってくる、この小さな黒い訪問者には、くれぐれもご注意ください。