お米の袋や米びつの中に発見される虫。一口に「米の虫」と言っても、その正体はいくつかの種類に分けられます。中でも、日本の家庭で最も一般的に見られる代表格が、「コクゾウムシ」と「ノシメマダラメイガ」の二種類です。それぞれの特徴や生態を知ることは、彼らの被害を防ぎ、適切な対策を講じる上で非常に重要になります。まず、「コクゾウムシ」は、体長2~3ミリ程度の、黒褐色をした小さな甲虫です。その名の通り、ゾウの鼻のような長い口(口吻)を持っているのが最大の特徴です。この口を使って、彼らは米粒に小さな穴を開け、その中に卵を産み付けます。卵は非常に小さく、肉眼で発見することはほぼ不可能です。米の中に産み付けられた卵は、やがて孵化し、幼虫は米粒の内部を食べて成長します。栄養をすっかり吸い取られた米粒は、中がスカスカになり、やがて幼虫はさなぎを経て成虫となり、米粒を食い破って外に出てきます。そして、また別の米粒に産卵するというサイクルを繰り返すのです。米びつの底に白い粉が溜まっていたら、それはコクゾウムシが米を食べた後の粉である可能性が高いです。一方、「ノシメマダラメイガ」は、成虫になると体長1cmほどの小さな蛾(ガ)です。米びつの周りを小さな蛾が飛んでいたら、それはノシメマダラメイガかもしれません。被害を及ぼすのは、主にその幼虫の時期です。成虫は米袋の隙間などから侵入して米の表面に産卵し、孵化した幼虫(イモムシ状)が米を食べて成長します。この幼虫は、米を食べる際に糸を吐き、米粒同士をくっつけて、まるで蜘蛛の巣のような塊を作ることがあります。米が不自然に固まっていたら、それはノシメマダラメイガの幼虫がいるサインかもしれません。成長した幼虫は、米びつの中から出て、台所の壁や天井などでさなぎになり、やがて成虫の蛾となって飛び立ちます。この二種類の虫は、発生源や生態は異なりますが、どちらも高温多湿な環境を好み、特に夏場に活動が活発になるという共通点があります。彼らの特徴を理解し、早期にその兆候を発見することが、被害の拡大を防ぐ鍵となります。