ある繁盛している居酒屋のオーナー店主から寄せられた体験談は、バルサンの「あぶり出し効果」の凄まじさを物語っています。その店では毎日、閉店後にスタッフ総出で床を磨き、排水溝を洗浄していましたが、古い雑居ビルということもあり、時折見かける小さなチャバネゴキブリに悩まされていました。店主は意を決して、定休日の前夜にプロ仕様のバルサンを厨房と客席の全域に仕掛けました。翌朝、換気のために店に入った店主を待ち受けていたのは、想像を絶する光景でした。普段は清潔に見えていた厨房のステンレス台の上や、客席の座布団の間から、夥しい数のゴキブリが這い出し、力尽きていたのです。店主は「自分では完璧に掃除していたつもりだったが、あんなに狭い什器の隙間にこれほどの数が潜んでいたのか」と腰を抜かさんばかりに驚いたと言います。この事例で注目すべきは、バルサンによって「出てきた」個体の分布状況です。大型冷蔵庫の裏や食器洗浄機の基板付近に死骸が集中していたことから、そこが主要な繁殖拠点、いわゆる「巣」であったことが明確になりました。店主はこの情報を元に、駆除後の清掃では什器を全て動かし、今まで手が届かなかった場所の油汚れを根こそぎ除去しました。また、壁の僅かなひび割れが侵入路になっていることも判明し、即座にパテで埋める補修を行いました。バルサンでゴキブリが出てくるというショッキングな出来事は、店主にとって「隠れたリスクの可視化」という最大のメリットをもたらしたのです。飲食店にとって、ゴキブリの存在は信頼の崩壊に直結します。しかし、バルサンを焚いて「何も出なかった」と安心するよりも、徹底的に「出し切る」ことで現状を把握し、対策をアップデートすることの方が遥かに価値があります。この店主は現在、三ヶ月に一度の「バルサン一斉清掃」を店の重要行事として定着させています。あの日、床を埋め尽くした影に怯えた経験が、今では「一匹の侵入も許さない」というプロの衛生管理意識へと昇華されました。バルサンで敵をあぶり出すことは、単なる殺虫作業ではなく、店舗の資産価値と安全を守り抜くための、毅然とした決意の表明なのです。