公園や広場で、鳩に餌を与えている光景。それは、一見すると、心温まる、動物愛護の精神の表れのように見えるかもしれません。しかし、この「餌付け」という行為こそが、地域全体の鳩被害を深刻化させ、私たちの生活環境を脅かす、非常に大きな原因となっていることを、私たちは認識する必要があります。鳩は、本来、野生の環境下で、植物の種子や、昆虫などを探して食べています。しかし、人間が、パンくずや、スナック菓子、あるいは、鳩専用の餌などを与えると、彼らは、苦労して餌を探す必要がなくなります。これにより、特定の場所に、大量の鳩が定着するようになります。栄養状態が良くなることで、鳩の繁殖力はさらに高まり、年に何回も産卵を繰り返すようになります。その結果、その地域の鳩の個体数が、異常に増加してしまうのです。そして、増えすぎた鳩は、餌場である公園周辺の、マンションのベラン-ダや、戸建ての軒下を、新たな「ねぐら」や「巣」の場所として、次々と開拓し始めます。つまり、一人の無責任な餌付け行為が、その地域全体の糞害や騒音被害を、ドミノ式に拡大させていくのです。また、餌付けは、鳩自身の健康にも、悪影響を及ぼします。人間が与えるパンやスナック菓子は、鳩にとって、栄養バランスが偏った「ジャンクフード」です。それを食べ続けることで、鳩は病気になりやすくなります。さらに、餌場に多くの鳩が密集することで、病気や寄生虫が、個体間で蔓延しやすくなるという、衛生上の問題も発生します。多くの自治体では、条例によって、公園などでの鳩への餌付けを、禁止または自粛するように呼びかけています。かわいそう、という一時的な感情からくる餌付けは、結果的に、鳩と人間の双方にとって、不幸な結果しか招きません。野生動物とは、適切な距離を保ち、過度に干渉しないこと。それこそが、真の意味での、動物との共存と言えるでしょう。