昔から朝の蜘蛛は殺すな夜の蜘蛛は殺せという言い伝えがありますがこれは単なる迷信ではなくある種の生活の知恵が含まれている一方で現代の科学的な視点から見れば蜘蛛は朝だろうが夜だろうが基本的には殺すべきではない生き物です。なぜなら家の中に入り込んでくる足の長い蜘蛛たちのほとんどは人間にとって害をなす害虫を捕食してくれる益虫だからであり彼らを殺すことは家の中の生態系のバランスを崩し結果として人間にとって不都合な状況を招くことになるからです。例えばアシダカグモを一匹殺すことはその蜘蛛が将来食べるはずだった数百匹のゴキブリを生き延びさせることを意味しておりゴキブリが増えればそれを媒介とする病原菌のリスクも高まります。またユウレイグモやハエトリグモはダニやコバエ蚊などを食べてくれますがこれらの害虫はアレルギーの原因になったり病気を運んだりする実害の大きい存在です。蜘蛛は殺虫剤を使わずにこれらの害虫を24時間体制で駆除してくれる優秀なハンターでありいわば天然のバイオ殺虫剤とも言える存在なのです。さらに蜘蛛は巣を張るタイプであっても徘徊するタイプであっても自分から人間に近づいて攻撃してくることは極めて稀であり彼らが噛むのは自分の身に危険が迫ったときの最終手段に過ぎません。見た目がグロテスクであるとか動きが気持ち悪いとか巣が汚いといった理由はあくまで人間の心理的な不快感によるものであり彼らの生命活動そのものが人間に害を与えているわけではないのです。もちろん毒グモであるセアカゴケグモなどは例外であり見つけ次第駆除する必要がありますが家の中で見かける足の長い蜘蛛のほとんどは無害な種類です。蜘蛛を殺してしまうことのもう一つのデメリットは他の害虫の侵入を許してしまうことであり蜘蛛という上位捕食者がいなくなることでそのニッチ(生態的地位)が空きそこに別の捕食者や害虫が入り込んでくる可能性があります。自然界には無駄な命はなく家の中という小さな環境においても食う食われるの関係が成り立っており蜘蛛はその頂点近くに位置して個体数を調整する重要な役割を担っています。感情的に嫌いだからという理由だけで彼らを排除するのではなく彼らが果たしている役割を正しく理解し共存とはいかないまでも無用な殺生は避けてそっと外に逃がすという選択をすることが賢明な現代人の振る舞いと言えるのではないでしょうか。