あれは蒸し暑さが肌にまとわりつく、夏の深夜二時のことでした。一日の疲れを癒そうと深い眠りに落ちていた私の顔に、何かがモゾモゾと這い上がるような、言いようのない不気味な感覚が走りました。最初は寝ぼけて自分の髪の毛かと思っていましたが、その感覚がこめかみから額へと移動した瞬間、私の本能が激しい警報を鳴らしました。ガバッと跳ね起き、震える手でサイドテーブルのライトをつけた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、枕の上を悠然と横切る、十五センチはあろうかという巨大なムカデの姿でした。あの無数の足が波打つように動き、毒々しい光沢を放つ褐色の体を見たとき、私は人生で最大級の悲鳴を上げそうになりました。しかし、声を出せば相手を刺激し、攻撃を誘発するのではないかという恐怖が勝り、私は息を殺してベッドから飛び退くのが精一杯でした。ムカデという足が多い虫は、暗闇を好み、かつ暖かい場所、すなわち人間の体温や布団の中を寝床として選んでしまうことが多々あります。あの日、もし私が寝返りを打ってムカデを押し潰していたら、今頃は激痛と腫れで救急外来に駆け込んでいたことでしょう。私はすぐに部屋の隅に常備していた強力な殺虫スプレーを手に取りましたが、いざ噴射しようとした際、ムカデがベッドのわずかな隙間へと滑り込んでいくのを見て絶望的な気分になりました。足が多い虫の恐ろしさは、その隠密性と、わずか数ミリの隙間さえあれば姿を消せる平坦な身体構造にあります。その夜、私はリビングのソファに避難しましたが、一睡もできませんでした。カーテンの揺れ、床に落ちた糸くず、すべてがムカデに見えてくるという強迫観念に取り憑かれたのです。翌朝、私は部屋中の家具を動かし、徹底的な大捜索を開始しました。結局、奴は見つかりませんでしたが、その代わりにキッチンの配管と床の間に、大きな隙間があるのを発見しました。そこが、闇から這い出してきた暗殺者の入り口だったのです。私はすぐにホームセンターへ走り、防虫成分が含まれたパテを購入し、その穴をこれでもかというほど厚く塗り固めました。また、家の周囲には粉末状の忌避剤を一本丸ごと撒き散らし、目に見えない「結界」を張りました。この恐怖の体験は、私に住まいのセキュリティがいかに脆弱であるかを痛感させました。それ以来、私は毎晩寝る前に、天井や壁の隅を懐中電灯で照らして確認するのが日課となりました。足が多い虫との遭遇は、私の平穏を一時的に奪いましたが、同時に住まいをメンテナンスし、自分自身の防衛意識を高めるための厳しい試練でもありました。今、私の寝室には再び静寂が戻っていますが、あの枕元を這った足の感触だけは、二度と忘れることのできない一生のトラウマとして、今も私の記憶の底で疼いています。
深夜の寝室で遭遇した足が多い虫との戦いの日記